産業用無線LANの特徴とは?無線LANの選び方を徹底解説

無線LANといえば家庭などで使用するWi-Fiが身近ですが、産業用無線LANには家庭や小規模オフィスで使用するWi-Fiにはない機能やメリットがあります。企業が無線LANを使用するうえで、欠かせない機能や様々な対策を知っておくことは非常に重要です。この記事では、産業用無線LANの特徴や選び方を紹介していきます。

産業用無線LANの特徴4選

産業用無線LAN

産業用無線LANと家庭や小規模オフィスで使用する無線LANの違いは、例えば頑丈な設計や使用する環境に合わせた機能です。産業用無線LANならではの特徴を紹介します。

1. 産業用無線LANは耐環境性(湿度や温度など)に配慮

産業用無線LANは、厳しい環境条件で利用されることもあります。例えば、温度差が激しい工場や高温多湿の環境、温度や湿度管理が必要な冷蔵庫内、寒冷地施設、非常に乾燥した場所などです。厳しい環境条件での産業用無線LANの利用は、装置内の電子デバイスが劣化しやすくなったり故障の原因になったりするため、過酷な環境でも耐えられる耐環境性が求められます。

耐環境性への配慮や工夫をいくつか紹介します。

高温時・低温時を想定した基盤設計

長寿命な部品を採用

過剰な電力消費による発熱量増加を防ぐための分散設置

発熱多発箇所にはヒートシンクの取り付け

などがあります。

2. 振動や衝撃に耐えるため頑丈設計

産業用無線LANはバスや電車、工場など振動や衝撃が発生する場所に設置されることが多いです。特に工場内では、AGV(無人搬送車)などの搬送装置や機械によって振動や衝撃が発生しやすいため、耐震性や耐衝撃性がある頑丈な設計が必要です。無線LANなどの電子・電気機器には環境試験というものがあります。

温度・湿度・気圧

機械的ストレス

品質や耐用寿命

など、実際の環境条件をもとに試験を行います。IEC 60068などJIS規格(日本産業規格)の環境試験をクリアしている規格やEN50155といった世界中で使用されている欧州の鉄道規格などを採用した装置は頑丈であり安心して使用が可能です。

3. 電気的ノイズ耐性もクリア

電気的ノイズとはノイズ電流のラインに別の電子機器や信号線が接近し、電磁・静電誘導により伝わるノイズのことです。工場内にはたくさんの機械やAGVがあり、それらがノイズ源になり誤作動や故障を引き起こす場合もあります。ほかにも人が持つ静電気も電気的ノイズの原因のひとつで、これらの人的・機械的な電気的ノイズを解消するためには、ESD対策(静電気放電対策)やEMC(電磁両立性)が必要になるでしょう。工場などで使用する電子・電気機器の規格にはEN 61000-6-2,6-4 (EMC)があり、静電気への耐性の規格にはIEC 61000-4-2 (ESD)があります。

4. ダウンタイムを排除し電波に関する高度機能が満載

ダウンタイムとは工場の設備などが動作しなくなる、いわゆる稼働停止時間のことです。ダウンタイムは生産や収益の損失に直結し、さらにはメンテナンスにかかるコストや労力も増加します。ビジネスに悪影響を与える深刻な問題であるため対策が必要です。ダウンタイムを排除する機能として、デュアル絶縁機能や高度ローミング機能、冗長構成などがあります。また、ネットワーク構成の可視化も効果的です。ダウンタイムを減少させるには、問題を早期発見し原因究明・問題解決を素早く行う必要があります。

産業用無線LANの選び方

産業用無線LAN

ここからは産業用無線LANの選び方について紹介します。

1. 通信速度はどのくらいか

産業用無線LANを選ぶ際は、業務効率に直結する通信速度は非常に重要です。Wi-Fi6の最大通信速度は「9.6Gbps」で、ひとつ前のWi-Fi5に比べると約10倍情報処理が速くなり、高速かつ混雑に強いという特徴があります。OFDMAを採用したことにより、複数の機器が同時にWi-Fiを使用しても速度が低下しにくくなりました。Wi-Fi6は2.4GHz帯と5GHz帯のふたつの周波数帯を持ち、電波の状況によって周波数を変えられます。

IEEE802.11ac(Wi-Fi5)

Wi-Fi5の最大通信速度は「6.9Gbps」で、周波数は無線LAN専用の5GHz帯なので安定した通信が可能です。Wi-Fi5にはMU-MIMOが採用され、複数の機器が同時にWi-Fiを使用しても速度が低下しにくく、さらに遮断物があっても電波が届きやすいのが特徴です。

IEEE802.11n(Wi-Fi4)

Wi-Fi4の最大通信速度は「300Mbps」で、周波数は2.4GHz帯と5GHz帯です。Wi-Fi6に比べると通信速度は半分以下ですが、MIMO対応の高速通信で安定性もあります。2.4GHz帯は通信距離が長いことが特徴なので、遮断物にも強く十分な使用感を得られるでしょう。

2. 接続できる回線はどのくらいか

産業用無線LANは同時接続できる回線数も重要です。10~20台ほどの同時接続が可能な製品が多いですが、中には50台まで同時接続が可能な製品もあります。複数の機器で無線LANを使用する場合、ロードバランサ機能が搭載されていると通信が安定します。ロードバランサ機能は、負荷を分散することで過剰な混雑を防ぎシステムダウンを抑制させる機能です。接続できる回線数に加えて、ロードバランサ機能が搭載されているか確認するといいでしょう。

3. 便利機能の搭載有無

産業用無線LANには便利な機能が搭載されています。搭載されている機能を確認しておくと、環境構築がスムーズに進むでしょう。

PoE機能

LANケーブルを通してネットワーク構築をしながら電力供給する方法です。電源ケーブルを要さないので、屋外や天井などコンセントの確保が難しい場所でも柔軟に設置場所を選べます。

設定のコピー機能

産業用無線LANには、設定のコピー機能が搭載されている製品が数多くあります。この機能を利用するにはWPS対応である必要がありますが、手間を省ける非常に便利な機能です。

4. セキュリティー機能は万全か

企業が無線LANを利用するうえで、通信速度に匹敵するほどセキュリティー機能も重要です。産業用無線LANを選ぶ際には必ず確認をしましょう。

プライバシーセパレータ機能

無線LANに同時接続している機器同士のアクセスを禁止し覗き見を防ぐ機能で、セキュリティーの保護が見込まれます。この機能を利用すれば、無線LANに接続した機器がウィルス感染した場合でも、別の機器との接続を遮断するため防御が可能です。

MACアドレスフィルタリング機能

あらかじめMACアドレスを登録した機器とのみ接続を可能にする機能です。第三者からのアクセスを防ぎ、セキュリティー保護の強化が見込まれます。「MACアクセス制限」とも呼ばれます。

認証機能

認証機能にはPSKとEAPがあり、PSKは家庭や小規模オフィスに適していてEAPは企業に適しています。PSKは事前共有キーを用いて認証し、認証サーバーは使用しません。EAPは認証サーバーを使用し、複数ある認証方式から選択が可能で「サーバー認証方式」とも呼ばれます。

暗号化方式

暗号化された通信を行うには「暗号キー」が必要で、親機に設定されたキーを知っている機器のみ通信が可能です。暗号化方式にはAES、TKIP、WEPがあり、AESが最も高い暗号強度と安全性を兼ね備えています。独自暗号化技術を搭載している製品もあります。

まとめ

産業用無線LAN

産業用無線LANは、過酷な環境であっても接続を安定させ、無線LANを安心して使用できる機能が搭載されています。最適な環境構築を行うには、同時接続が可能な回線数や通信速度、セキュリティーなど自社に適した装置を選ばなければなりません。無線LAN構築サービスなどの活用も検討して産業用無線LANの最適な環境構築を目指しましょう。